頭の歪みの種類
頭の歪みには、大きく分けて、二種類あります。
一つ目は、病気が原因で起こるものです。
病的なものの代表は、頭の中に溜まっている髄液の生産、循環、吸収の障害から頭が異常に大きくなってしまう「水頭症」や、本来は頭蓋の成長と共にゆっくり時間をかけて閉じていく縫合線が部分的または全体にわたり早期に癒合してしまうことで、頭蓋の成長が妨げられてしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症」等が挙げられます。
二つ目は、出生前あるいは出生後(またはその両方)の頭の形成途中で頭蓋骨がまだ柔らかい時期に、偏った外力がその形成を妨げ続けた結果起こるもので、「位置的頭蓋変形症」と称されます
では、これら病気ではない「 位置的頭蓋変形症」には、具体的にはどのような原因があるのでしょうか。出生前から起こる先天性変形、出生後の環境で起こる後天性変形の例を挙げてみましょう。
位置的頭蓋変形症とは
<斜頭症>

斜頭症(plagiocephaly)は、形状異常の中でも最も一般的なものです。この変形には、首を全方向に自在に動かせないなどの「首の虚弱や緊張」、「斜頚」など伴うことがあります。このような状態が長く続くと、首の姿勢がいつも同じになりがちとなり、扁平な部分が生じてきます。特に、
- 後頭部の片側に扁平があり、反対側に突出がある。
- 片方の耳が、後方の扁平と同じ側の前方に、目で見て分かる程ずれている。
- 後頭部の扁平と同じ側の額が前方にずれている。
- 後頭部の扁平と同じ側の目と頬が前方にずれ、顔を非対称にしている。
などの特徴が顕著な場合、治療が必要なこともあります。
<短頭症>

このタイプは通常、赤ちゃんが長時間にわたって仰向け寝の体位でいることが原因で起こり、自由に左右横方向に頭を傾けたり動かしたりできなくなります。特に、
- 後頭部全体に扁平がある。
- 頭頂が左右対称に突出しており、頭が異常に幅広い。
- 横から見たときに、普通よりも頭頂が高く傾斜が急である。
- 額が突出し、両側に向かって広がっている。
などの特徴が顕著な場合、治療が必要なこともあります。
<長頭症>

長頭症の赤ちゃんは、長く狭まった頭の形をしています。通常、横向きばかりの体位で寝かされ続けた赤ちゃんに現れやすい症状です。横向き寝は、新生児集中治療室(NICU)の低出生体重児の赤ちゃんにとっては一般的な体位であり、発症しやすい環境にあると言えます。特に、
- 頭が異常に長く狭まっており、矢状縫合線に沿う畝(うね)がない。
- 額あるいは後頭部に隆起や突出が見られる。
などの特徴が確認された場合は、治療が必要なこともあります。また、長頭症を持つ赤ちゃんの頭の形状は、矢状縫合癒合症の赤ちゃんの頭の形状と非常に似ており、医師による判断が特に必要になります。
頭がゆがむ原因
○先天性のゆがみ
・先天性変形の原因としては、主に母親の子宮内での環境や分娩過程における処置が挙げられます。

上記のような原因により、多くの赤ちゃんが扁平あるいは形状異常を有して生まれてきます。
これは特に珍しいことではなく、その赤ちゃんの殆どは、出生後には抑圧などの物理的な力から解放され、様々な体位にさせておけば、自然と丸くて対称的な形の頭になる傾向にあります。
しかし、一旦変形してしまうと、扁平となった方を下にして寝る方が安定するため、更に同じ向き癖で寝続ける状況を生み出し、変形を助長させてしまう場合もあります。
24時間積極的な体位変換を行うことは不可能なので、結局向き癖が改善されず扁平部分がそのまま残ってしまう赤ちゃんも多いのです。
○後天性のゆがみ
古くから、米国では赤ちゃんをうつ伏せで寝かせることが常で、後頭部にかかる重力が軽減されていたため、今ほど「頭蓋変形症」は問題になっていませんでした。
しかし、乳幼児突然死症候群(SIDS)撲滅のため、1992年に乳幼児の仰向け寝が推進され始めてから、赤ちゃんが自力で体位変換できるようになるまで仰向け寝で寝かせられるようになりました。
結果として突然死は劇的に減少しましたが、仰向け寝が赤ちゃんの体位と運動を制限し、後頭部が扁平になる赤ちゃんが急増しました。
このような出来事からもわかるように、後天性変形は、長時間同じ体勢で寝かせることに主な原因があります。またそれとは別に、先天的な要因が出生後の環境に影響し変形が起きる場合もあります。
<寝る(頭を休ませる)位置によりかかる重力>

<先天的要因が出生後の過ごし方に影響>
- 筋性斜頸は首の運動に制限があり、一方方向にしか向けず、更に変形を助長します。
- 早産の場合、頭蓋が著しく柔らかく、また発育能力と運動神経コントロールが未熟なため、頭蓋変形を引き起こしやすくなります。
- 新生児集中治療室(NICU)における長期入院過程で、チューブやリードの配置の都合により、赤ちゃん達は左右どちらかの一方向に向いた状態で寝かせられます。極端に柔らかい早産の頭蓋は、異常な長頭(舟状)頭蓋形状へと急速に進んでいき、頭蓋は非常に長く狭まった形に変形されていきます。そのような環境で体位変換もされずに過ごした赤ちゃんは、退院後も運動神経のコントロールを欠いている場合があります。
位置的頭蓋変形症の治療方法
頭蓋変形が位置的要因で起こっている場合、月齢が低く変形が比較的軽度で済んでいる赤ちゃんは、体位変換の工夫により改善する可能性があります。
ただし、月齢が低くとも変形が中等度から重度の場合や、変形が軽度であっても月齢が進んでしまっている場合は、体位変換の工夫ではカバーしきれないことが多く、 その場合はリモルディングヘルメット(正式名Cranial Remolding Orthosis)による治療を行うことが効果的です。
リモルディングヘルメットは、決して変形した頭の突出部分を押し込む(Push)ことなく、突出部をそれ以上突き出させないよう抑え(Hold)、 扁平部分の周りに理想的な成長空間(Open)を作り、本来あるべき頭蓋の形状に成長するように促します。
つまり、歪んだ頭を外力により正常な状態に変え正して「矯正」するのではなく、歪みにより頭の成長が欠如している部分に今後の成長を優位に促し、正常な形へと「再形成」します。
(株式会社AHS Japan Corporation HPより引用)
https://www.ahsjapan.com/introduct/#a01